2009年12月2日水曜日

こぼれるアート


『絵をかく人々のチャリティ展2009 小さなギャラリーからこぼれるアート』

今年のチャリティ展にはこんな副題が付いています。

ギャラリーかれんは大倉山駅すぐそば、商店街の真ん中と立地もよく普段からお客様にもたくさんお越しいただいています。通りに面した約八坪の小さなギャラリーですが地元の創作活動をされるかたから全国各地のアーティストまで幅広くご利用いただき、その展示空間は毎週、通りを歩く方たちに新鮮な印象を与えてきているのではと思います。

そんな小さなギャラリースペースで都内の有名ギャリーや公立美術館などを中心に発表活動をされている現代美術作家、その中でも絵画という表現方法に取り組んでいらっしゃる方を中心にお招きし、大倉山の町からさらに多く、広く、作家や作品、かれんの施設の活動をまさにこぼれおちるかのごとく紹介していければと思い、今回の副題が付けられました。

2003年秋に『絵をかく人々の集い』展というチャリティ展がギャラリーかれんでスタートしてから今回で6回目の展覧会となります。当時アートかれんのスタッフでした天本と大学時代からの恩師、中村一美さんとの話で、「ギャラリーかれんのように福祉作業所が運営するギャリーは珍しいし、それだけで面白い。何か変わった展覧会は企画できないだろうか。そもそも絵描きは普段から社会的な接点を持つ機会や場が少ない、けれどもみんな何らかの形で社会とコミットしていきたいのでは、ではそんな展覧会をチャリティという形で行えば面白いんじゃないか。」そこからこの企画はスタートしました。

『絵をかく人々の集い』は2005年まで3回開催されました。参加作家は流動的に、新しく参加してくださる方、都合で参加ができない方がいらっしゃいましたが、その都度かれんのために集まってくださった作家さんに支えられ展覧会が続けられました。

ギャラリー奥のアートかれん作業スペースには展覧会のお客様に見ていただこうと、壁一面にメンバーさんたちが日ごろから制作している作品を展示、この間作品をお客様に買っていただくということも少しずつではありますが行われるようになりました。

2006年、4回目を迎えるチャリティ展は作家さんと一緒にメンバーさんの作品も同じギャラリー空間に展示しよう、ということになりました。展覧会名も『絵をかく人々のチャリティ展』として新しいスタートともなりました。

そして今回の展覧会を迎え、全体としてこのかたちが定着してきているように感じます。参加作家のみなさんもこの展覧会のための作品を出してくださることがあります。前の投稿でも触れましたが、普段発表されないようなサイズの作品、ちょっと実験的な内容の作品、販売価格もチャリティ価格、などなどみなさん、実に工夫を凝らして参加してくださいます。またみなさんやはり作家というつらく険しい道を歩き続けている方たちです。チャリティだからといって普段と変わらない、同じスタイルで作品を発表する、というかたももちろんいらっしゃいます。

かれんのチャリティ展のいいところ(と思っています)は主催する側が、絶対こういった形で参加してください、というものがない、というところでしょうか。参加作家がそれぞれのスタンスで自由に参加できるという余裕が残されている、無理な年は参加を見送る、参加できる年は参加する、といったような自由さがあると思います。

それからこのさきほどから登場する「チャリティ」という言葉、おもに慈善の気持ちで物品や金銭を提供、また行動をおこす、といった意味があると思います。

この言葉を使う側、受け取る側で広い意味合いの受け取り方ができる言葉であるとも思います。

「チャリティ」「展覧会」ということで、開催する側、参加出展する作家さん、見に来られるお客様、また作品を購入してくださる方、それから開催の結果得られた収益などを受け取る立場(かれんはかれんが開催してかれんがいただくということになりますが)、などさまざまな関わりでその言葉の持つ意味の解釈もいろいろなのではと思います。

かれんは横浜市からの助成金で運営される施設です。少ない予算の中で工夫を重ねながら運営を続けています。またメンバーさんの日頃の頑張りから収入を得ていってもいます。

チャリティ展では売上からのお金を寄付していただくことで、施設の活動も潤いますし、メンバーさんたちの制作活動がより充実していけるようお金を使わせていただき本当にうれしいかぎりです。

と、同時に作家のみなさんと合同の展覧会を開くということ、第一線でご活躍の作家のみなさんと同じ壁に作品を並べること、このことがメンバーさんたち、施設にとってもどれほど意義のあることか。自分や仲間たちの作品と同時にプロの作品を鑑賞しながらどんなことを感じているのかな、今後なにかの影響が表れてくるのかもしれないな、とか、いろいろとスタッフたちは思ってしまいます。

また作家さんがお連れ下さるお客様にメンバーさん作品を見ていただくこと、また気に入った作品を購入してくださることが、どれだけ私たちを勇気づけてくれるかということを考えると(参加作家の方もよくかれんメンバーさんの作品のかなり本気で気に入ってくださり購入してくださる場面もたくさんあるんですよ)「チャリティ」という言葉がもつ豊かなふくみを感じずにはいられません。

話は戻り『小さなギャラリーからこぼれるアート』のタイトルはアートかれんの超ベテランスタッフ新堂のアイデアです。小さなギャラリーに展示されている小さな作品(4号~6号が中心ですので小品と言えると思います)たちが大きな空間を作り出しているのだなと思います。

展覧会は今週土曜日までです。どうぞよろしくお願いします。

なお会期中、部分的に展示替えを行っています。

メープルかれん天本でした。